日本の伝統工芸品である「漆器」は、長年使い続けられるようにさまざまな工夫がされ、作りあげられた一種の芸術作品です。漆器は長年使い続けていると欠けが生じ、塗りがはがれるなどの不具合も出てくるものです。
今回は漆器が修理できるものなのか、どのような方法があるのかなどについて解説していきます。
漆器の修理はできるのか
結論からいうと、漆器の修理は「可能」です。まず漆器は「長持ちすること」を前提に作られているものなので、塗りがはがれてくれば塗りを重ねて塗りなおして、再度使えるようにできます。また塗りの原料である漆は、防水性や防湿性に優れている塗料として使われています。
食器として主に使うことの多い漆器は、食器として長い間使い続けられるようにと考えられた、先代日本人の知恵の結晶です。漆器は使い込まれれば使い込まれるだけ、味わいが深くなるともいえます。ぜひ修理をして、愛着を持って使い続けていきましょう。
漆器を修理する手順
漆器を修理するには器の本体である木材の部分、そしてそのうえに塗られた塗装の部分をそれぞれ確認し、必要な修理を行うことになります。修理の手順はどのようになっているのか、詳しくご紹介しましょう。
塗りを一度はがす
まず漆器の表面に塗られている漆などを一度はがすところから、修理ははじまります。塗りといっても、漆器の場合は「上地」と「下地」があります。たとえば漆器本来のツヤがなくなっている程度の場合は、上地の塗装だけを塗りなおしすれば、元のようにツヤを取り戻せることでしょう。
しかしこれからも長い間使い続けようとすれば、下地の部分もしっかり補修しておく方がベストです。その場合は上地をいったんはがして、下地も場合によってはさらにはがし、再度塗りなおす方法で修理します。
木材のヒビや欠けを補修
上地と下地をはがすと、漆器の本体ともいえる木材の部分があらわれます。木材の部分には経年劣化の結果ヒビが生じていることもあり、ヒビか悪化すると塗りの部分までひび割れが発生することになるのです。木材のヒビを直すときには、日々の部分にあて布をする方法があります。そのうえに下地そして上地を塗り重ねていくことで、元の漆器の美しさをよみがえらせられるのです。
漆器によっては「中塗り」を行う場合もあります。これは上地と下地の間にもうひとつの層を作るもので、より長持ちするように修理をしたい場合に用いられる手法です。なかには「金次ぎ(かねつぎ)」と呼ばれる方法もあります。これはヒビの部分に金粉を含んだつなぎで加工する方法で、金次ぎならではの美しさがあると評価されているものです。
なお木材の一部が欠けているような場合は、なかなか元通りの補修ができない場合もあります。その場合には「それもまた粋」と考えると、漆器の美しさをより再確認できることでしょう。
乾燥
漆器の修理は、乾燥の繰り返しともいえます。上地・中塗り・下地とそれぞれの工程において乾燥を繰り返すことで、より強度を高められるためです。昔の漆器が現代までその美しさを残し続けているのは、やはり考え抜かれた工程と丁寧な仕上げによるものでしょう。
乾燥は自然乾燥が一般的です。夏の暑さ・冬の寒さに耐えて乾燥した漆器は、より長持ちする耐久性を身につけられるのです。
再度塗りを行う
すべての塗装ができればいよいよ漆を塗り、もとの美しさに戻す作業となります。漆といってもその配合によって色合いはかなり変わってくるため、もとの色と同じ色になるように、慎重な配合が行われます。またあえてもとの色とは違う色になおすことで、その漆器の別の美しさを見出すのもよいでしょう。
たとえば家庭に伝わる漆器は、祖父母の代・父母の代・孫の代と、受け継がれているものが多いのです。伝統を感じながら日常生活で使い続けたい、という人も多くなっています。日常生活で溶け込む色に変えるなど、さまざまなアレンジを楽しむのもよいでしょう。
漆器の修理を依頼するには
今までご紹介したように、漆器の修理は素人が自分で材料を買ってきてできるものではありません。基本的にはその漆器を作った職人さんにお願いするか、購入したお店を通じて修理を依頼するかの二択になります。しかしすでにそれらの記憶がなくなっている場合もあるでしょうから、その際には修理を受けつけている店舗に相談してみるとよいでしょう。
最近では購入の有無にかかわらず、漆器の修理相談に乗ってくれる業者も多くなっています。一度現物をみてもらって、修理料金の見積もりをお願いしてみましょう。
まとめ
東京都中央区日本橋にある「株式会社小林宝林堂」は、和家具や漆器の専門店です。みなさんの愛着のある漆器の修理にも対応しています。まず漆器を実際に持参する、または送ることで現物の状況を把握し、見積もりを提示いたします。金額に同意いただければあとは現物を預け、3ヶ月程度で修理が完了です。
ホームページには実際の作業内容や、作業をする職人の情報なども詳しく掲載しております。ぜひともお気軽にご相談ください。