輪島塗はどのようにして生まれた?輪島塗の歴史や有名になった理由を徹底解説

輪島塗が生産されているのは石川県輪島市です。輪島塗が生産されている輪島市一帯では、縄文時代から漆器が作られていたことが判明しています。ではその後、どのようにして現在の輪島塗へと進化を遂げたのでしょうか。この記事では、輪島塗の歴史とここまで有名になった理由を詳しく解説します。

輪島塗の歴史とは?

日本海に面した能登半島の北西に位置する輪島市は、人口は約3万人にも満たない小さな町です。しかしこの小さな町で作られる輪島塗は、全国に多数の愛好家を持つ名品となっています。輪島塗の歴史を紐解くために、発祥やその後の技術の確立はいつ行われたのかを時代を追ってご紹介します。

縄文時代

輪島塗がいつ発祥したのかを辿るには、輪島塗の元となった漆器作りがいつから行われていたのかを知る必要があります。輪島市に隣接した七尾市に「田鶴浜町三引遺跡」がありますが、そこから縄文時代に作られた漆器が出土しています。このことから、輪島市一帯ではなんと縄文時代から漆器作りが行われていたことが分かります。

室町時代

漆の樹液を塗った漆器自体は全国で作られていましたが、輪島塗の原型となる技術が用いられるようになったのは室町時代のことです。輪島市河井町にある重蔵権現本殿の朱塗扉が日本最古の輪島塗だといわれています。

 

輪島塗の技術がどのようにしてもたらされたかには諸説あります。現在の和歌山県と三重県の南部に位置する紀州の根来寺の僧侶が輪島に来て、寺の家具類を製造する際に漆工技術が伝来したという説の他に、輪島の人が根来に行って技術を習得して持ち帰ったという説も残されています。

江戸時代前期

現在多くの人を惹きつけてやまない輪島塗の伝統技法が確立されたのは、江戸時代前期のことです。きっかけとなったのは、輪島の地で取れる「地の粉」と呼ばれる珪藻土の粉を漆の樹液に混ぜ込んで下地を強化する技術が生まれたことです。

 

この技術によって、上から塗った漆の魅力を最大限発揮するだけでなく、輪島塗特有の丈夫な漆器が生み出されたのです。輪島市は海に面しているので、海路を利用して全国に輪島塗が広まっていきました。

江戸時代中期

江戸時代中期には、輪島塗の特徴のひとつである「沈金」の技術が大工五郎兵衛という人物によって確立されます。沈金とは、上塗りされた漆器の表面にノミで彫刻を施し、その凹みに漆の樹液をすりこんでから金や銀の金属粉を入れ込むことで接着させて描く技法のことです。それまで輪島塗は朱色や黒色の無地のものがほとんどでしたが、沈金の技術によって美しい装飾が加えられるようになりました。

江戸時代後期

江戸時代後期には、現在の福島県西部に当たる会津から蒔絵師である安吉という人物が輪島後に移住し、輪島塗に「蒔絵」の技術が取り入れられました。蒔絵とは上塗りされた漆器の表面に漆の樹液で模様などを描き、ゆっくりとしか乾かない樹液に金や銀の金属粉を蒔いて描く技法のことです。この蒔絵の技術によって、輪島塗はさらに華やかになりました。

輪島塗が有名になった理由とは?

輪島塗は江戸時代にその名を全国にとどろかせるまでになりましたが、ここまで有名になったのは塗師屋と呼ばれる立場の人が自ら製品の見本を見せながら商売をして、受注を増やしていった歴史があるからです。

 

塗師屋とは、輪島塗の分業しているそれぞれの職人たちを統括する立場の人のことをいいます。輪島塗には細かく分けると優に100を超える工程があるため、作業効率を高めるために分業制が採用されています。塗師屋は多くの職人たちを統括する以外にも、お客様の要望に基づいて製品のデザインを考えることも行っていました。

 

この時代、地方の商品を販売するには問屋を介するのが一般的でしたが、輪島の地は古くから海運の要所だったということもあり、問屋を介さず塗師屋自ら輪島塗を全国各地に販売しました。輪島塗のことを知り尽くした塗師屋が商品の説明をするので、お客様への説得力は抜群だったに違いありません。

 

さまざまなお客様の要望を受けて輪島塗の職人たちは技術をさらに磨いて応えていったので、現在でも漆器といえば輪島塗を思い浮かべる人が多いほど有名になっていきました。また、塗師屋は全国各地の情報や文化を持ち帰ったので、輪島ではさまざまな地方の文化が融合した独自の文化が発展していったのです。

まとめ

輪島塗は石川県輪島市で作られていますが、この地では縄文時代から漆器作りが行われてきました。室町時代に日本最古の輪島塗が生まれ、江戸時代前期に伝統技法が確立されました。江戸時代中期には沈金、後期には蒔絵の技術が取り入れられ、現在に受け継がれている装飾が美しい輪島塗へと進化を遂げていったのです。

 

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