数多くのバリエーションがある漆器の産地による特徴とは?詳しく解説

漆器は漆を使用した日本古来より存在する食器です。その美しさと耐久性が人気を博し、現代においても使用され続けているほどです。そんな漆器ですが、産地によって特色があるということをご存知でしょうか。どのような違いがあるのかなど、意外と知らない方も多いことでしょう。そこで今回は、漆器の産地の違いによるそれぞれの特徴についてご紹介いたします。

産地による違い

漆器というのは、漆を使って表面を加工した日本の伝統工芸品の一種です。基本的には漆を使用している食器であれば、漆器と属する形となりますのでそのバリエーションは多岐にわたります。もちろんデザインに関しても非常に多くの種類がありますので、それが人気の理由の一つでもあるのではないでしょうか。また、産地に関しても日本の特定地域で制作されているものに関しては、一つのカテゴリとして確立していたりもします。そこで気になるのは、産地によって漆器にどのような違いがあるのかという点です。

 

そもそも産地がなぜいくつも存在しているのかという点ですが、漆器には漆が不可欠です。縄文時代から作られ始めたとされていますが、当時は今ほど流通に関して流れができていたわけではありません。そうなると、漆が採取しやすい地域に産地が集中することになります。また、良質の木材が近隣から取れて、かつ漆器づくりに適した80%前後の湿度であることが条件となります。これらの条件を満たす地域は限られてくることから、特定の産地による漆器が確立されるようになったのでした。

 

また、漆器そのものは江戸時代に全国的に広まったため、日本の文化に深く根付いていきました。漆器づくりに適した地域ですが、条件は満たしているものの環境としては当然それぞれには違いが少なからずあります。また製作者も異なりますので、漆器として産地による特色が出ることになり、それが漆器のバリエーションとして楽しまれるようになったのです。

石川県で盛んな理由

漆器の生産が盛んな地域はいくつかに限定されますが、その中で石川県が特に有名です。その理由としては、以下が挙げられます。

輪島塗の存在

まず石川県産の漆器には世界的にも有名な『輪島塗』という漆器が存在しています。漆器製品の中でも最高級品と言われており、漆器の頂点と言っても過言ではありません。そんな輪島塗は石川県の工芸品となっています。輪島地の粉(珪藻土の粉末)を使用していることによって輪島塗となるため、他の地域では生産ができないのです。輪島塗は漆器の中でも唯一無二の存在ですので、これでまず漆器の産地として石川県が台頭するようになったのでした。

複数の漆器が誕生

石川県の漆器は輪島塗だけではありません。他にもいくつかの種類が存在しており、石川県産の漆器というわけでいくつもあるということにあります。これが漆器といえば石川県というイメージで浸透した理由です。漆器は流行り廃りがないので、それが現代まで続いていることでいまもなお石川県では漆器の生産が盛んであるということになったのでした。

北陸で有名な漆器について

ここからは、輪島塗以外に石川県、およびその周辺の北陸地方で有名な漆器について、詳しくご紹介していきます。

山中漆器(石川県)とは

漆器の産地として盛んな石川県ですが、輪島塗以外の有名な漆器として挙げられるのが『山中漆器』です。最大の特徴はその木目の美しさにあります。漆を塗る前の素材状態のことを木地というのですが、熟練の職人が最もこだわっている部分なのです。その背景としてはそもそも木地師の技術を受け継ぎ、その技術を武器に独自の進化を遂げてきたという点にあります。

 

そのこだわりの製法ですが、ろくろを使った縦木取りという方法によって木地を切り出すというものになっています。この製法は年輪の向きに逆らわないようにするというもので、非常に頑丈な木地となりますが、1本の木からはそれほど多くは切り出すことができません。頑丈な木地では、器としての耐久性が優れているというだけでなく、繊細な細工に耐えうるためデザイン性にも優れるという点がメリットとなります。

 

漆の塗装方法に関してもこだわりがあり、木地に対して漆をすり込み拭き取るという作業を何度も繰り返す、拭漆(ふきうるし)という方法を採用しております。この方法でさらに耐久性が強化されるほか、木地を美しく見せるという効果もあるのです。木地の美しさはこのように切り出しや塗装におけるこだわりによって成立しているというわけです。

 

越前石器(福井県)とは

福井県を産地とする有名な漆器としてあげられるのが『越前漆器』です。眼鏡の産地としても知られている鯖江にて制作されています。あまり聞き慣れない名称の漆器かもしれませんが、実は業務用漆器としては全国でも8割という圧倒的なシェアを占めているものなのです。福井県で漆器が誕生した経緯としては、漆かきという職人の存在にあります。漆かきというのは漆を採集する職人のことで、この地域では多く存在していたのでした。その漆かきが厳選に厳選を重ねていった結果、上質な漆を使用するに至り、それにより他にはない上質な漆器が誕生しました。

 

起源としては、約1500年前の古墳時代の末期頃となります。当時即位前の継体天皇が越前を訪れた際に、故障した冠の修理を鯖江の塗師へ命じたことが始まりとされています。その出来栄えに満足した継体天皇は、漆器づくりを奨励したことによって漆器の産地として栄えることになったのです。そして漆かきが多数存在するようになると、そのクオリティは他の追随を許さいない上質なものへと進化を遂げていったのでした。当時の漆かきは、日光東照宮建築時に使用する漆の採集を依頼されたというエピソードからも、いかに信頼を置かれていたのかがおわかりになるのではないでしょうか。

まとめ

どの産地の漆器も歴史や特色があり、人気のあるものばかりです。どれかお気に入りのものを手に入れて、いつまでも大切に使ってみてください。長年使い続けるためには時に修理が必要になることも出てきます。そんなときは「小林宝林堂」にご相談ください。熟練の技術と経験豊富な職人の手によって、漆器を見事に蘇らせます。まずはお気軽にお問い合わせください。

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